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ニュースリリース
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- 10.3, 2023
- Amit Rai研究員が"RIKEN People"に掲載されました。
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- 9.15, 2023
- 斉藤和季センター長が「日本生薬学会 JNM・生薬学雑誌 論文賞」を受賞しました。
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- 7.11, 2023
- 及川彰客員主管研究員、佐々木亮介専門技術員らが執筆した書籍が出版されました。
- 「決定版 質量分析活用スタンダード(羊土社)」
研究概要
メタボロミクスとファイトケミカルゲノミクス
細胞内の全代謝産物を同定および定量し、ゲノム機能と対応させることがメタボロミクス(メタボローム解析)です。当グループでは、主に高性能質量分析計を用いて網羅的な代謝産物解析の技術開発とハイスループット代謝産物解析を行っています。これらのメタボローム解析データからのデータマイニングと未知遺伝子機能同定をセンター内外の研究チームと共同で行っています。また、植物が生産する多様な化合物群は、植物自身の生存にとって重要であるばかりでなく、我々人間の生存にも欠かせない機能を有します。このような植物のもつ多様な物質生産機能の基本原理をシロイヌナズナなどのモデル植物を用いて解明するとともに、農作物、薬用植物などの有用植物における特異的産物の生産システムをゲノムレベルで解明しています(ファイトケミカルゲノミクス)。その結果得られた基礎的な知見を直ちに生物工学的に応用する研究も推進しています。
研究内容
- 質量分析計を用いたメタボロームの精密ハイスループット解析手法の開発
- 代謝産物同定のためのデータベースの構築とメタボロームデータ解析のバイオインフォマティクス
- シロイヌナズナ、イネなどの遺伝子組み換え体ラインなどの代謝プロファイリング、ストレス応答、細胞分化および代謝機能分化に伴うメタボローム解析
- ポストゲノム手法を用いたシロイヌナズナにおける一次・二次代謝産物生合成に関わる遺伝子の網羅的同定
- 有用植物における、フラボノイド、アルカロイド、テルペノイド、含硫黄成分、アミノ酸などの生合成や蓄積に関わる新規遺伝子の同定およびネットワーク解明と有用物質生産への応用
研究成果
- アミノ酸、有機酸、糖、脂質などの一次代謝物、およびフェニルプロパノイド、フラボノイド、テルペノイド、アルカロイドなどの二次代謝物を含む多様な植物成分をハイスループットに定量するためのGC, CE, LC-TOF/MSを用いた分析系を立ち上げました。さらに、多変量解析を用いたクロマトデータ処理技術を利用し、植物成分の網羅的解析を目指す分析基盤となるメタボローム解析パイプラインの構築を行いました。
- メタボローム解析のための情報基盤として、植物代謝産物のクロマトグラフィーおよび質量分析データの収集を行いました。さらに、マススペクトラムデータベースの構築を目指すMassBankプロジェクト (JST/BIRD) に参加し、得られたデータを公開しました。また、文献データを基にした植物代謝産物の質量分析データベースReSpectを構築しました。
- トランスクリプトームとメタボロームとの統合解析をおこない、紫外線ストレス下でのシロイヌナズナの代謝制御やイネの特異的遺伝子欠損の影響を解析しました。
- シロイヌナズナの部位、組織別のメタボロームデータを取得し、データベースAtMetExpress development構築しました。さらにシロイヌナズナの20種のエコタイプのメタボロームデータベースAtMetExpress 20 ecotypeを構築しました。
- シロイヌナズナに含まれるフラボノイド、アントシアニン類を網羅的に同定しました。これをもとに、遺伝子の共発現データ、候補遺伝子変異体の二次代謝物プロファイルデータ、発現タンパクの生化学データを統合した解析を行い、フラボノイド、アントシアニン生合成関連酵素遺伝子の機能を複数同定しました。
- トリテルペン、ステロイドやアルカロイドの生合成に必要な遺伝子同定をメタボローム解析と遺伝子発現解析を統合して行いました。
- イネの育種や食品的形質、農業形質に重要なメタボローム解析を農林水産省の研究所と共同で行いました。
- 遺伝子組換え植物の実質的同等性評価のためのメタボローム解析のパイプラインを構築し、遺伝子組換えトマトの評価に応用しました。
- シロイヌナズナや重要作物、実用植物の機能解明を目的として、センター内外のグループとのメタボローム解析と機能に関する共同研究を行いました。
Fig.1 メタボローム解析に用いる各種質量分析計
Fig.2 有用成分生合成の遺伝子共発現ネットワーク解析